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2007年12月 1日 (土)

[本] 『荒地の恋』(ねじめ正一)

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2007 文藝春秋 ISBN:978-4163263502

詩人の北村太郎が、親友だった田村隆一の妻と50歳をすぎてから
恋に落ち、不倫関係になる小説だというので読んでみた。
完全にミーハー的な興味からである。

「荒地」というのは詩の同人誌の名で、この詩誌には
北村・田村のほか鮎川信夫、黒田三郎、加島祥造、
三好豊一郎、吉本隆明らが参加していた。

北村と田村は10代のころからの親友どうし。
70年代、田村隆一は、戦後の詩人としては谷川俊太郎とならぶ
最も詩集がよく売れる詩人だった。
一方、当時の北村太郎は寡作で、どちらかといえば新聞社での
会社勤めが生活の中心。

その北村が、53歳で田村の妻明子と道ならぬ恋に落ちる。

北村と家族の平和な暮らしが激変する。
すでにこじれかけていた田村夫妻の関係はますます悪化する。
北村の妻は半狂乱になる。田村は若い愛人のもとへ。
北村は会社を辞め、逃げるように家を出て、明子と安アパートで
一緒に暮らすようになる。

北村と暮らしはじめた明子だが、田村との関係も切れたわけではない。
北村といても、明子はアル中の田村を気にかけている。
田村は田村で、酔うと北村に会いたがる。
自分の妻と親密になった男だが、それでも長年の親友だからだ。
前半は、この三人のドロドロの関係がすごい。こりゃたいへんだ。

特に田村隆一の人物描写がうまいと思う。
田村隆一がいかにダンディでかっこよかったかというのは
複数の人が書いていて読んだことがある。
TVコマーシャルにも起用されたスター詩人だった。
しかし身近にいると迷惑な人でもあったろう。
わがまま、自分勝手で寂しがりやで、アル中である。
それでもなお、人を惹きつける魅力と、詩の才能にあふれた
人物だったというのがよく伝わってきた。

後半はあらら、と言う展開。
北村に若い恋人ができたりする。
友人の死。
明子さんは病んでいく。
やがて北村にも死の影がしのびよる。

「荒地の恋」ということで、鮎川信夫や加島祥造ら、荒地グループの
詩人たちの恋愛の顛末も少しだけ語られる。
鮎川信夫の友情の篤さにしんみり。

以下のインタビューによると、執筆には7年かかったとか。
『荒地の恋』で新境地 ねじめ正一さん (作家・詩人):東京新聞

力作だけあってとてもおもしろくて、耽読しました。
大満足。新刊で買ってよかった。

いままで田村隆一も北村太郎も、おもにミステリーの
翻訳者としてしか読んだことがなかったので(北村訳の
夢果つる街』は大好きだ)、詩人としての作品も一度しっかりと
読んでみたい。

北村太郎を探して
北村太郎を探して

腐敗性物質 (講談社文芸文庫)
腐敗性物質 (講談社文芸文庫) 田村隆一

スコッチと銭湯 (ランティエ叢書)
スコッチと銭湯 (ランティエ叢書) 田村隆一

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