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2005年2月26日 (土)

[本] 失われし書庫 (ジョン・ダニング)

失われし書庫

古書店主クリフ・ジェーンウェイ・シリーズの3作目。

同シリーズの2作目を読んでから随分経っているので、
もう出ないのかと思っていた。
やっと新作が出たと思ったら、今作は前の2作とは
少々趣がちがう。

前半は主人公の経営する古書店が主な舞台で、
古書の話題も多い。
だが中盤以降は、19世紀のイギリスの探検家
リチャード・バートンの謎を中心に展開する
歴史ミステリとなっている。

このシリーズの、元刑事で古書店主であるという
主人公の設定は実にユニーク。
それだけでもうご飯が何杯でも、じゃなかった、
小説が何本でも成立しそうなものだが、あえて
それに頼らずに、これほど野心的な大作を書くというのは
単純にこの作者は凄いなと思う。

面白いのは、作中作のようなかたちで挿入されている、
バートンの数ヶ月間のアメリカ南部への旅の部分だ。
作者の創作による仮想歴史小説のようなものだが、
実際その時期のバートンについては記録が残っておらず、
バートン研究の空白期間となっているらしい。

しかもこの旅の部分は、バートンの同行者の孫であるという
女性(現在はおばあさん)に退行催眠をかけて、
その女性が祖父から聞いた話の記憶を呼び戻し、
語ったことを記録したものという設定。
そんな小説内小説の設定って、これまで他に例があったろうか?

とにかくこの旅の部分が読み物としてかなり面白い。

そしてもちろん主人公クリフの活躍も楽しめる。
今回、主人公は2人の女性と行動を共にする。
この3人の微妙な関係も読みどころ。
女性たちを守ろうとする意識があまりにも過剰な
マッチョ男・クリフを、ともに勝気な2人の女性が
煙たがるのがおかしい。

古書に関する部分をメモ。
「死の蔵書」の頃と現在とでは古書業界も様変わりしている。
最大の変化はインターネット通販の影響だ。

今ではずぶの素人でもコンピュータを検索して本の値段を決めることができる。値段のつけかたは適切か、版は同じか――かつては大事だったそんな問題は、古本ハンターや、フリー・マーケットの主催者や、極端な場合には廃品回収業者がインターネットで古書販売サイトを開く時代になって、急速に色褪せて言った。“インターネットのおかげで誰でも同じ場所に並べるようになった”というのがその連中の好きなお題目だが、実際には出所の怪しい本を、おたがい同士が怪しげな値段で売ったり買ったりして、共食いをしているにすぎない。(p.85)

日本と同じだ。


失われし書庫

The Bookman's Promise (2004)

ジョン・ダニング 宮脇孝雄訳 
2004年 早川書房 (ハヤカワ・ミステリ文庫)


失われし書庫WEB本の雑誌

「失われし書庫」ジョン・ダニング著カエルのたまごさん)
失われし書庫旅行用+R氏の記録さん)
「失われし書庫」 ジョン・ダニング 早川書房 お薦め度 ★★★★☆
  (わたしのブックシェルフさん)
『失われし書庫』を読了本を読みながらさん)
失われし書庫深上の快落日記さん)
栄光なき勝利の予感soramoveさん)

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コメント

トラックバックありがとうございました。
「退行催眠」は私もびっくりしました。
インタヴュー形式で催眠者が語るエピソードを断片的に提示していく……というのならあったような気がしますが、ここまで完全に作中作になってるのはめずらしいですよね。
しかも、話者と作中作の主人公がまったくの別というのも意表つかれました。
本当は結末にもう一ひねりあったほうが良かったんじゃないかなという気がするのですが、あのように終えたのは作者の優しさかなとも思いました。

投稿: yw1126 | 2005年2月27日 (日) 17:07

コメントありがとうございます。
たしかに、ラストは割りとあっさりでしたね。

でも、次作につながりやすい結末だったようにも思います。
今年出るらしいですからね。
楽しみです。

投稿: ヒグマ | 2005年2月27日 (日) 21:04

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