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2004年11月24日 (水)

爆笑ハードボイルド

古 傷

古 傷
東直己 2004年 光文社(光文社文庫)

いや笑った笑った。

『古傷』は、短編集『逆襲』(2001)で初登場した私立探偵・法間謙一を主人公に据えた初の長編となる。
「逆襲」が非常に面白かったので、続編を心待ちにしていた。
ついに出たよ!

この法間探偵、とにかく会った相手を褒めておだててヨイショしまくるという、前代未聞の幇間(ホウカン)探偵である。
超軽薄な男だが、探偵としての実力はしっかりと備えている。
ひたすら褒める探偵手法で爆笑させつつ、いつのまにか事件を解決へ導いていく驚くべきヒーロー。
短編の「逆襲」を読んだ際は、あまりの可笑しさにぜひシリーズ化してほしい、そして出来れば長編で読みたい、と強く思ったものだ。

ただし一面で、長編は無理かもしれない、というあきらめの気持ちもあった。
何しろ主人公のキャラクターが特異すぎる。
この主人公が長丁場で活躍するとなると、膨大な数のヨイショを
主人公に言わせ続けねばならないわけで、著者の負担は想像するに余りある。
かなりの難事業となるはず。

そこを、東氏、よくぞチャレンジして、完成させてくれた。それだけで感動なのである。
光文社文庫の書き下ろし。
少々字が大きく、薄めの本ではあるが、出ただけでも十分満足だ。

そしてもちろん内容もバッチリ面白かったのだった。
法間の超人的なお世辞の数々には笑わせてもらった。
ラストはほんの少し苦い味わいであった。
法間がなぜお世辞を言うのか、その理由らしきものがほんの少し垣間見えて、ちょっと共感を覚えたりもする。

東直己(Amazon.co.jp)

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