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2004年11月23日 (火)

笠智衆『大船日記』

大船日記―小津安二郎先生の思い出
笠智衆 1991 扶桑社

この本は、企画した人がえらい。
小津安二郎映画が好きで、笠智衆が好きなファンにとって、これほど望まれる本はない。
扶桑社の人、よくぞやってくれたと思う。

ほとんどの小津映画に出演している笠が、小津の演出方法や、その人となりについて語っている。
また、小津映画に出演した俳優たちや、同時代に活躍していた他の映画監督たち、そしてもちろん、笠自身の俳優人生についても回想している。
資料としてたいへんに貴重だし、読み物としても実に面白い。

あとがきによれば、笠が自ら筆をとったわけではなく、笠が語ったことを、編集者が文章にまとめたそうだ。
とてもよく構成されていて、話し言葉の文体もいい。
本当に目の前で笠智衆が語っているかのようだ。
非常に読みやすく、笠智衆を身近な存在として感じることができた。

きびしい演出で知られる小津監督。アドリブも一切認めなかったという。
特にオーバーな演技が嫌いで、役者が思う通りにできないと何度でもやり直しさせた。
そんな小津の演出に、笠はたった一度だけ「できません」と言ったことがあった。
有名なエピソードだが、「晩春」のラストシーンでのことだ。
「慟哭してくれ」という小津監督の注文を断ったのだ。

そんな笠智衆自身の口から語られる現場の裏話は、どれも興味深い。
小津映画を楽しむ上で、必須の副読本だと思う。
巻末には小津安二郎の監督作品リストと、笠智衆の出演作品リストがある。
これも貴重な資料だ。
この本は本当におすすめです。

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